未来のかけらを探して

2章・世界のどこかにきっといる
―28話・気がつけばきな臭さ―



暑さを避けるための昼夜逆転生活を続けること1日半。
目的地の港町が見えたのは、明け方になってからだった。
この時間に空いている宿はないので、
ルビーの勧めで数時間仮眠を取ってから、プーレたちは日中の町中に繰り出した。


―ヴィパスの町―
海辺に面したヴィパスの町は、やはり暑い日ざしがまぶしいところだ。
暑さ慣れしている人間なら、潮風のにおいにまで気が回るところだが、
寒冷地方出身の3人はもちろんそれどころではない。
「ふぁ……やっぱ、ねむいよー。」
「しかも、あついよぉ〜。」
「ずぇんずぇんすずしくナーイ……。」
「お前ら、砂漠に居る間は文句しか言ってないよな……?」
あからさまにローテンションな3人を見て、アルセスが苦笑いする。
もちろん彼にも気持ちが分からないわけでもないから、変にせっついたり活を入れたりはしない。
むしろ、自分より小さい子達が倒れもせずに頑張っているのだから、
内心ではえらいなあと純粋に感心してしまうくらいだろう。
“さーて。お前ら、次はどこに行くんだ?”
「どーせなら、今まで行ってない国に行ってみたいよネ。」
「そうだね。えーっと今まで行ったのは……ミシディアとエブラーナと、キアタルでしょ。
それから……そういえば、トロイアってちょっとしか居なかったね。」
行った国は4カ国。結構ある方だ。
「あ、そういえばあそこって、
うまい食べ物とかきれいな森と水があるらしいよな。」
「わー、いいなぁ〜♪」
「いってみたいねぇ〜。」
「そうだね〜……いいかも。」
パササとエルンの2人は食べ物に目を輝かせ、
プーレは以前チョコボ仲間から聞いた噂話を思い出してうっとりしている。
「なんか、みんな行きたそうだな。
あ、でも一応他に行ってないところってあるのか?」
「後行ってないところって……バロンとファブールかなぁ?」
「ファブールはぼくの故郷だけど……。
行ってもお兄ちゃんはいないと思うしなぁ。」
居るのなら居るでいいかも知れないが、
「とりあえず、どこにでる船があるか聞いてみよう。
船がないんじゃ、行ったことがなくても行けないもんな。」
アルセスの提案で、プーレ達はまず船着場に向かった。


船着場の案内窓口に行き。今使える航路を受付のおじさんに尋ねた。
「今出てるのは、バロン・ファブール・ミシディア・エブラーナ方面だな。」
「あれ?トロイアにはないのか?」
「ああ、あそこか……。
それが今、トロイアは魔物がうじゃうじゃ居て、入れる状況じゃないらしい。」
「え、どうして?!」
「何でも妙な塔が磁力の洞窟辺りに生えてきて、
そいつのせいでおかしくなったとか……。
調査に行った人間もボロボロとか、ろくな話聞かないんだよ。」
「うっそ〜……い、いつから?」
とんでもない話にプーレはぞっとした。
少なくとも、次元の狭間にうっかりワープする前にはそんな話を聞いた覚えはない。
「うーん、ここ最近の話だな。」
知らない間に国がとんでもないことになっていると言うのを聞くと、
本当に半年のブランクは長いと思わされる。
「トロイアっていつから危ないところになったんダヨ……。」
パササがこっそり毒づくのも無理はない。
知らない間に事情が変わりすぎなのだから。
「うーん……行けないんじゃしょうがないな。
なぁおじさん、もう一度聞くけど後は大丈夫?」
「おう。そこの航路図に出てる港なら全部出てるぜ!
ただ、最近またモンスターの気が立っててよ、あぶねーから気をつけるんだぞ。」
「けっきょく、どこもあぶないのぉ?」
エルンがちょっとだけ嫌そうな顔でおじさんに聞き返す。
「そうだなー嬢ちゃん、どこもあぶねぇなぁ。」
エルンの疑問に、受付のおじさんも苦笑するしかない。
少し横の壁を見てみれば、そこには大きく注意書きが張ってある。
魔物が凶暴化しているので注意。とのことだ。町の自警団からのお知らせらしい。
一時はまだ安全だったのにと、
港の看板の近くでたむろしているグループがぼやいているのも聞こえる。
(危ないってことは、ごはんは節約できそうだネ!)
(あー……そう、だね。)
半端ではないパササとエルンの食欲のせいで、
船に乗る前は出費がかさむが、今回は少し少なめでも大丈夫そうだ。
懐事情はいつも秋か冬なので、ある意味ではいい話かもしれない。
―この間、船の上でひどい目にあったばっかりじゃないか……。
こっそりルビーはそう思ったが、プーレ達はけろっとしている。
忘れているのか、それはそれなのか。
いつまでも引きずるのも良くないが、省みなさ過ぎるのも考え物だ。
「じゃあ、バロンとファブールは?」
「なぁおじさん、バロンとファブールの船はいつ出るんだ?」
「あー、どっちも明日の昼だな。まぁ、迷ってたって明日までに決めりゃいいんだ。
外ほっつき歩くなり、さっさと宿行ってくつろいだりしたらどーだい?」
気を取り直してたずねると、すぐに明確な返答があった。
ついでに、当たり障りが無い良いアドバイスもつけてくれる。
「明日か……。分かった。ありがとな。」
船が出るのはどちらも明日。
バロンとファブールのどちらに行くかはともかく、聞きたいことは聞けたのでもうここに用はない。
そういうわけで、プーレ達はさっさと船着場を後にした。


―市場―
食料の買出しも兼ねて市場にやってきた一行。
あちらこちらの露店に目を奪われつつ、目的地にも頭を悩ませる。
船の出港が明日なので、考える時間は十分にあるのだが。
「うーん、バロンかファブール……。」
プーレが真面目に考え込む。
どちらにも、絶対行かないといけないという事情があるわけでもないので、余計に決め手に掛けるのだ。
すると、横から妙にご機嫌なエルンの声が聞こえてきた。
「プーレの故郷か〜、気になるなぁ〜♪」
「え゛。き、気になる?でもバロンの方がいいかもしれないし……。」
急に話を振られて、プーレが引きつった。
聞かれても不思議ではないことのはずだが、どうやらプーレにとっては微妙な点のようだ。
「さっき航路図を見たけどさ、ファブールからでもバロンには行けるから大丈夫だぞ。
えーっと……確かファブール城の近くだったら、飛空艇の定期便も出てたしな。」
「どうしようかなぁ……。先にバロンに行っちゃう?」
「えー、でもプーレのおうちー!」
プーレが言ったそばから、パササがつまらなそうに口を挟んでくる。
つっこまれたプーレは、困惑しきりだ。
「何でぼくの森がそんなに……。」
「こらこら、落ち着けよお前ら。」
何故か故郷に興味を示されたプーレは、うーんとうなって考え込んでしまった。
別に帰ってくるなといわれたわけでもないし、帰れないことはない。
育ち具合が、同じ年に生まれた幼馴染よりも遅くなってしまったと思うと嫌だが。
しかし、行くかどうか迷っているうちに、群の仲間や知り合いの顔まで思い出してしまうと、
ちょっと帰ってみたくもなってくる。
「じゃあ、行ってみよっか。」
「え、ホントにイイの?!」
「う、うん。」
目をキラキラ輝かせるパササに、
そんなに嬉しいのかなと内心首を傾げつつも、プーレは首を縦に振った。
「わ〜い、プーレのおうちぃ〜♪」
エルンも嬉しいのか、手をぱちぱち叩いて喜んでいる。
友達の家というものはお邪魔したくなるものという感覚は、群が違えば動物でもあるのだろう。
家族には会うことができなくても、
行った事がない場所にあるのだからそれだけで興味もわくに違いない。
「それじゃ物を買ったら、ちょっと早いけど宿を取ろうな。
涼しくなくても、外よりはましだろ。」
『うん!』
アルセスの提案に、3人は是非もなく声をそろえて飛びついた。
買出しをさっさと終わらせて、早く日陰に行きたいという気持ちが見え見えなのは、
目をつぶってやるべきところだろう。
―暑さを我慢しているごほうび位、おれの小遣いで買ってやろっかな?
ちょっと優しいことを考えながら、アルセスは買出しメモとにらめっこを始めた。


―宿屋―
アルセスが暑さが苦手な3人に配慮してくれたおかげで、
プーレ達は買い物を手早く済ませることが出来た。
おかげで、まだ日は高いが少々早めのチェックインという運びになった。
「あ゛〜、暑かっター!!」
叫びながらパササはベッドに突進した。
それに続いて、エルンもプーレも次々ベッドや椅子に陣取った。
最後に扉を閉めたアルセスが、そんな3人の様子に苦笑いしつつ空いたベッドの端に座った。
「お疲れさま。暑かったよなー。
地下水脈の近くも暑かったけど、こっちはもっとだよ。」
「ほんとだよぉ〜。あたしもパササもばてばてぇ〜……。」
「モー動きたくナ〜〜〜イ。」
これ見よがしにというつもりは本人たちには毛頭ないが、
露骨なまでに暑さ負けをアピールする2人。
もっとも、宿屋に入るまで我慢したのだから上出来だろう。
ここ数日は、彼らにとってはむちゃくちゃな環境がずっと続いたのだ。
体調も崩さず、よく頑張ったものである。
「さてと、明日の準備しとかないとだ。」
「あ、ぼくも手伝うよ。」
アルセスが買ってきた荷物の整理を始めようとすると、
ベッドに座っていたプーレがアルセスの方にやってきた。
暑さでばてているだろうに、とても協力的な姿勢である
「ありがとな。でも、休んでてもいいんだぞ?」
「大丈夫。休みたくなったら休むよ。」
“暑いんだし、明日は船に乗るんだからくたくたになるまでやるんじゃないぞ。”
「わかってるよ。」
“いやー、でも偉いよな〜。
あそこで転がってるどっかの誰かさん達は、
ナメクジみたいになってるだけで何もしそうにないぞ。”
「だれがナメクジだトー?!」
“あれー?俺は、誰がナメクジなんていってないけど。”
引っかかったといわんばかりに、わざとらしい口調でエメラルドはしらばっくれる。
もちろんパササは黙って受け流せるほど大人ではないので、
いつものようにぶちっと堪忍袋の緒が切れた。
「へりくつこねるなー!この緑!」
“何?その新しい罵倒語というか悪口。意味が分かりませーん。”
怒ったパササが口走った言葉に、調子に乗って大うけする始末。
そろそろ止めるべきかと考えたルビーは、精神的な疲れを覚えつつたしなめることにした。
“エメラルド……暇だからって、からかって遊ぶのはやめろ。”
“遊んでないって。有意義な暇つぶし。”
「ウソツケー!!」
相変わらずの見え透いた屁理屈に、パササがお約束のつっこみを決めた。
エメラルドがせめて何らかの生き物だったら、漫才コンビとして売り出せそうだ。
「あーぁ〜、パササがおこっちゃったぁ。
おこって元気になっちゃだめだよ〜、つかれちゃうよぉ?」
「つかれたらぜったいコイツのせいダヨ!!」
びしっと、床に放り出された荷物袋を指差してパササが叫ぶ。
すると、中に入っているエメラルドが不満そうなテレパシーを性懲りも無く飛ばしてきた。
“あ、ひどい。石差別。”
「うっるさーイ!!」
“2人ともそのくらいにしろ。
エメラルド、パササは疲れてるんだから、お前も適当なところでやめてやれ。”
“それもしょうがないか。”
気が済んだのか、一応ルビーの言うことを聞いたのか。
前者のような気がしてならないが、不毛な喧嘩が終わったのはいいことだ。
「本当に2人とも、けんかばっかりだね……。」
「コイツがケンカ売ってくるんだもん。しょうがないジャン!」
プーレに指摘されても、パササはまだ不機嫌なので対応はそっけない。
すぐに切り替えが出来るほど、大人になれる年でもないのでしょうがないことだ。
“疲れてるから余計イライラするんじゃないか?昼寝でもするといい。”
「そーするー。オヤスミ〜……。」
ルビーの提案に二つ返事で乗って、
パササは暑苦しい毛布を蹴り落としてから、シーツの上でそのまま昼寝の態勢に入った。
「うん、おやすみぃ〜♪」
相棒に昼寝の挨拶を済ませると、
エルンは暇になるのが分かっているのか、プーレとアルセスの方にやってきた。
「ん、お前も手伝うか?」
作業に興味があるのか、プーレの手元をじっと見つめ始めたエルンにアルセスは話しかけてみた。
するとエルンは、大して考えずに首を縦に振った。
「じゃあ、手伝う〜。」
「じゃあって……。まぁいいか、ありがとな。
じゃあエルンはこっちの袋にこれ詰めてくれよ。どの袋も、中が同じ数になるようにな。」
「わかったぁ〜。」
別にやる気があるわけでなくても、
一応手伝ってくれそうなのでアルセスは整理途中のアイテムと袋を渡した。
人数分に等分するだけなので、簡単だ。
「明日はお船かぁ。プーレのおうち、楽しみだねぇ〜。」
「そ、そう?あはははは……。」
アイテムを整理し始めていよいよ実感がわいたのか、エルンは何だかとても楽しそうだ。
そんな彼女にどう対処しようか困ったプーレは、結局曖昧に笑ってごまかした。



―前へ―  ―次へ―  ―戻る―

キリがないのでこの辺できりました(汗
小説暗黒期というわけではないと思いたいのですが、
長編にとっては良くない状況が続いたという点では暗黒ですね。
別に課題どうこうではなく、やる気なさ過ぎという点で(おい
飽きてるというよりは、単に自分が書きたくなるように話を持ってくのが下手なんでしょうね。
まぁ、長いですからね。本当は構成力がある人じゃないと厳しいんでしょう。
もうちょっと考えて話を作っていかないとですね。気をつけよう。